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第33話 ②

 そうして後宮一階のダイニングへと向かうと、宰相閣下は既に来ていた。  その頃には、ルカス陛下は普段の様子に戻っていた。  宰相閣下は、俺達が到着するまでの僅かな時間すら仕事に当てていたらしく、何人もの宰相府の秘書官が指示を仰いでいた。だが、俺達の姿を見ると、彼らはすぐに下がり、宰相閣下は立ち上がった。 「おはようございます、陛下。オルガ様」  ……宰相閣下は当然のように、俺を『様』と呼んだが、慣れ無さ過ぎて困る。 「せっかくの水入らずのお食事に、お邪魔して申し訳ない」  その後笑顔で宰相閣下が、あまり心のこもっていない感じで続けた。社交辞令だと分かる。瞳が、『早く仕事の話に入らせろ』と語っているからだ。その時、俺の隣でルカス陛下が息を呑んだ。 「べ、別に構わない! オルガと二人でなくとも、何の問題もない」 「? ええ。当然本気で問題があると思ったら、ここへは参りませんが?」  宰相閣下が首を傾げた。俺も首を傾げた。するとルカス陛下が咳き込んでから、何故なのか一人で焦るような顔をし、席に着いた。俺も座る。宰相閣下は腕を組み、暫くの間ルカス陛下を見てから、心なしか呆れたような顔をした後に、ゆっくりと座った。 「それで本題だ。視察の件です」  宰相閣下が切り出すと、ルカス陛下が細く吐息してから、冷静な顔に戻った。 「ああ、フェルスナ伯爵領への視察は、明後日出発だったな」 「陛下、二泊三日とし、中の一日で各地を回って頂きますが、大体はいつも通りで良いです」 「分かっている」  二人のやり取りを聞きながら、俺はスプーンを手に取った。すると宰相閣下が、少ししてから俺を見た。

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