34 / 62

第34話 ③

「オルガ様は基本的に、陛下の隣に並んで立ち、手でも振っていてくれれば良い」 「分かりました!」  大きく俺が頷くと、ルカス陛下が嘆息した。そして俺に言った。 「黙って手を振っているようにな」 「はい」 「くれぐれも、黙っているようにな」 「え?」 「話すと、聡明ではないと露見してしまう」 「おい!」  思わずムッとした俺を見て、ルカス陛下が吹き出した。宰相閣下まで笑っている。宰相閣下はそれからゆっくりと頷いた。 「確かに、新聞記事には大きく『聡明な文官だった』という見出しが出ていましたからな。嘘ではないが――悪い、笑った」 「嘘ではないんだ、宰相。俺もそれは認めよう」 「二人共、酷いですよね!」  そんなやりとりをしていると、宰相閣下は優雅なのに高速で食事を終えて、席を立った。 「途中で悪いが、立て込んでいるから、失礼する。ああ、いや――水入らずの場を邪魔するのも悪いですしね」  それから少しだけニヤリと笑い、ルカス陛下を見た。するとルカス陛下が咽せた。  俺は再び首を傾げつつ、美味しい料理を堪能していた。  こうして、この日も妃業務が始まった。  ――今日こそは、書類の山は無いはずだ。そう確信しながら、レストが開けてくれた扉の先を見て、俺は顔を引きつらせた。今日も、膨大な量の書類がある。 「おはようございます、王妃様」  デイルさんに挨拶された瞬間、思わず俺は声を上げた。 「この書類の山は、どこから来るんですか!?」

ともだちにシェアしよう!