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第34話 ③
「オルガ様は基本的に、陛下の隣に並んで立ち、手でも振っていてくれれば良い」
「分かりました!」
大きく俺が頷くと、ルカス陛下が嘆息した。そして俺に言った。
「黙って手を振っているようにな」
「はい」
「くれぐれも、黙っているようにな」
「え?」
「話すと、聡明ではないと露見してしまう」
「おい!」
思わずムッとした俺を見て、ルカス陛下が吹き出した。宰相閣下まで笑っている。宰相閣下はそれからゆっくりと頷いた。
「確かに、新聞記事には大きく『聡明な文官だった』という見出しが出ていましたからな。嘘ではないが――悪い、笑った」
「嘘ではないんだ、宰相。俺もそれは認めよう」
「二人共、酷いですよね!」
そんなやりとりをしていると、宰相閣下は優雅なのに高速で食事を終えて、席を立った。
「途中で悪いが、立て込んでいるから、失礼する。ああ、いや――水入らずの場を邪魔するのも悪いですしね」
それから少しだけニヤリと笑い、ルカス陛下を見た。するとルカス陛下が咽せた。
俺は再び首を傾げつつ、美味しい料理を堪能していた。
こうして、この日も妃業務が始まった。
――今日こそは、書類の山は無いはずだ。そう確信しながら、レストが開けてくれた扉の先を見て、俺は顔を引きつらせた。今日も、膨大な量の書類がある。
「おはようございます、王妃様」
デイルさんに挨拶された瞬間、思わず俺は声を上げた。
「この書類の山は、どこから来るんですか!?」
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