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第35話 ④

 夜中に誰かが運んできているのだろうか……そう考えていると、デイルさんが虚を突かれたような顔をした。そして、室内へと振り返り、何もない壁を見た。 「ええと、ですね」  それからその壁まで歩み寄ると、ぴたりと端の花の模様に触れた。すると壁が上に登って行き――莫大な量の、雪崩も起きないくらいびっしりと敷き詰められた紙が見えた。ぽかんとして、俺は目を見開く。 「ルカス陛下が即位なさってから、王妃様は一人もおられなかったので、数年前の分から、今後予定される数年先の分まで含めつつ、表の書類も内部の書類も裏の書類も溜まりに溜まっております。普段は、急ぎの仕事や、オルガ様に処理が可能な量を調整しながら、こちらへお持ちしています」  俺は気が遠くなりそうになったのだった。これでは、一日で終わらせるなんていうのは、無理である……!  その後内容を聞くと、無論ハンコやサイン以外も必要な書類が大量にあると発覚した。俺はこの日、昼食も忘れ――夜は、ルカス陛下の誘いも断り、ひたすら仕事に没頭した。だが、そうであっても、壁の向こうの書類は、ほとんど減らなかったのだった。

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