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第36話 「話をしたいのだが」①
レストに先導されて、俺が疲れきって部屋へと戻ると、ルカス陛下が来ていた。
「遅かったな」
「仕事が沢山あったんです」
その場に用意されていた食事の前に座りながら、俺は嘆息した。すると正面の席に座り、ルカス陛下が俺を見た。
「――少し、話をしたいのだが」
「俺も話をしたいです」
フォークを手に取りながら、俺はルカス陛下へ視線を向ける。
「どう考えても、妃補佐官を含めた俺に与えられている仕事は、もっと別の効率が良いやり方があると思います。今の状況じゃ、効率が悪すぎて、俺が死ぬまでかかっても、俺がかなり長生きしたとしても、絶対に終わりません!」
そこから俺は、文官府にあった道具等、最低限必要なものを、仕事の具体内容に触れながら、ひたすら熱弁した。話しながら、パクパク食べて、そうしてまた怒涛の仕事トークだ。そんな俺を見て、ルカス陛下は最初、驚いたような顔をしていた。
こうして、俺は食べ終えると同時に、すべての考えを伝え終えた。
すると陛下がゆっくりと頷いた。
「非常に参考になった。すぐにでも手配させる」
「ありがとうございます!」
「……ただ、俺の話の方は、親睦を深めようという意図だったんだが……まぁ、良い。オルガも、仕事についての話であれば、頭が良いように思えるから不思議だな」
「俺が馬鹿だという前提が誤りです。間違いです」
「いや、そこの部分には自信がある――いいや、正確に言うならば、悟ったり先を読んだり察したりそういう部分が苦手なのだろうな」
決して褒められていないのは、分かった。
その後入浴をして部屋に戻ると、ルカス陛下が既に横になっていた。
俺も無言で寝台にあがる。
こうしてこの日も、一緒の寝台で眠った。勿論、距離をあけて。
――翌朝。
俺は心地の良い朝陽を感じながら、目を開ける事にした。今日もきっと、ルカス陛下は赤面しながら起きるのだろうと確信しながら、瞼を開ける。
そして、俺は硬直した。
「っ」
そこには、じっと俺を見ているルカス陛下の顔があったのである。俺を抱きしめたままで、真摯な瞳で、真っ直ぐに俺を見ていたのだ。少しだけ獰猛に見えて、ゾクリとする。その直後、俺は我に帰って赤面した。
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