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第37話 ②

「……今日は、起きていたんですね!」 「ああ。というよりも、俺の起床時間は大体いつも同じだ。オルガこそ、疲れていたんじゃないのか? スヤスヤと寝ていたぞ。全く起きる気配が無かった」 「どうして起こしてくれなかったんだ……!」 「お前が俺を眺めていた仕返しだ」 「手を離してくれ!」 「――抱き枕サービスをするんじゃなかったのか?」  いつもの寝起きの様子とは異なり、起床してだいぶ経っているからなのか、本日のルカス陛下には、普段と同じ余裕が見えた。それが悔しい。時計を見ると、ルカス陛下がいつも目を覚ます時間から、三十分は経っているのが分かった。まさかその間、ずっと俺を見ていたのだろうか。確かに、これは想像すると、恥ずかしい……。  慌てて距離を取ろうと考えた俺は、体を起こそうとした。  だが――陛下の腕に力がこもった。思わず目を見開く。 「オルガ」 「な、何?」 「――働いてもらえるのは、非常に助かる。だが、あまり無理はするな」  そう言って喉で笑うと、ルカス陛下が俺を腕から解放した。不意打ちのように優しい表情を見て、温かい言葉を耳にして、俺は何故なのか動揺し、上手く言葉を返せない。  ……その後食べた朝食は、頭では美味しいと理解できるのに、さっぱり味が分からなかった。  こうしてルカス陛下と別れて、この日も仕事に出かけた。  気持ちを切り替えよう。そう一人決意をして、俺は羽ペンを手に取った。  本日は、昼にはホットサンドを食べて、適度にお茶を飲みつつ仕事をしていく。ルカス陛下の言葉を俺が守ったからではなく、レストが用意してくれたのだ。補佐官のみんなも一緒に休んだ。そうしながら、明日からは視察に行くから数日間、こちらでは仕事が出来無い件についても話し合った。いくつか、俺の指示があれば可能な仕事もあったし、これまでのように補佐官達だけで可能な仕事もあるようだった。 「明日からは頑張ってきて下さいね!」 「オルガ様なら大丈夫ですよ!」  みんな、温かく応援してくれた。その内に、俺は朝の恥ずかしさなど、すっかり忘れた。なお、その日の夜は、遅くまで視察の最終的な打ち合わせがあるそうで、ルカス陛下は王宮の私室で休むとの事で、俺は一人で眠った。

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