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第4話

***  笹良相手に、不覚にもときめいてしまった。見ているだけで腹が立っていたのに、どうして胸が高鳴ってしまったのか。  かったるいゆえに、勉強なんてさっぱりしていないから、頭がおかしくなった可能性は低いが……。 因数分解の公式のひとつ。  >(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3  物理・力学エネルギーE  E=K+U  ただ公式を覚えるだけじゃ使えない。正しい公式を用いつつ、意識して使わなければ、まったく意味をなさないものになる。そうすることにより、必ず答えが導き出されるのだから。  テストに出される問題のすべてにおいて、答えがあるから書くことができた。たまにわからない問題があっても、なんとかして解き明かし、白紙で回答を出すことなんてしなかった。 (しかも今回の問題は、自分の躰に起こったことについてだというのに、さっぱり意味がわからないなんて)  もしや連立方程式が恋立方程式になってしまった結果、胸がときめいてしまったというのだろうか。しかもときめいた相手が男なんて、笑い話にもなりゃしない。  この謎を解くために、あえて積極的に笹良と接点を持つべく、話しかけた。以前よりも接点を増やすことで、ヒントがあるんじゃないかと思った。  そう考えたものの、普段気安く喋ったりしない相手だからこそ、自然に話しかける理由がなかなか思いつかなかった。  嫌がられる恐れがある、講義の内容を写させてもらうことを最終手段にして、不自然にならないように話しかけた。  こうして強引にコミュニケーションをとりながら、難題について答えを導き出そうと試みたのに、いまひとつピンとこない。無理やりに写させてもらっているせいか、友達のようなやり取りじゃなく、お互い半分くらいはケンカ腰になってる気がする。  だけど最近、何かがきっかけでバスケの話になった際に、眉根を寄せて俺を見る笹良のまなざしが、シュートを放つ瞬間に見せる表情とリンクすることを発見した。  それ以来、似たような顔を目の当たりにしたとき、ほんの一瞬だけど胸の奥がチリッと疼くようになってしまった。  友達はおろかチームメイト未満の関係だというのに、どうしてこんな反応をするのか。考えがまとまらないまま、時間だけが過ぎ去っていく。  そんな矢先に『おまえが好きなんだ』という爆弾発言をしてしまったのである。

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