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恋のマッチアップ番外編 膠着状態2

***  大好きな笹良の苛立っている感じが、端的に交わされる会話が進むごとに伝わってきたからこそ、俺なりに気を遣って場を和ませようとした。自分の素直な気持ちのすべてを吐露した俺を心配して、手首を掴んだ笹良の行為が嬉しかった。  触れられたところから伝わる笹良の熱で、どうにかなりそうだったのに、ほどなくしてあっけなく外されてしまった手首を、意気消沈しながら掴む。そこから感じとれるものは、もちろんなにもなく――。 「笹良……」  勝手にしろと捨て台詞を吐かれながら顔を背けられた時点で、目の前が真っ暗になる。  もうひとりの俺が慌てふためきながら笹良の背中に指をさし、「追いかけて謝り倒せ!」と喚いていたが、体育館の床に根をおろしたように両足がピクリとも動かなかった。 (――笹良は悪くないのに、自分の非を認めたくなくて、アイツのせいにした) 「ごめんな、笹良……」  妄想にとらわれるのは、それだけプレイに集中していない証拠。エロい格好で俺を誘う笹良の魔の手をかいくぐり、きっちりゴールを決めなければならない。 「これって笹良のイップスよりも、超難題じゃね?」  ひとりごとを呟いて、頭を抱えながらしゃがみ込む。そのタイミングで、集合を促す笛の音が響いた。ふらついて立ち上がり、集まってるメンバーの最後尾に群れる。  視界の先に、大好きな笹良の後頭部が目に留まった。周りのヤツと違い、柔らかそうな髪質をしていて、艶のあるその黒髪からいい匂いがこちらに漂う気がしたので、穴が開く勢いでじっと観察してみる。  生真面目な笹良とは反比例した、寝癖のついた笹良の襟足の髪。ちょっと動くと揺らめくその様子に、可愛い!の言葉を連呼したくなる。 (ボールばかり目で追っていたけど、笹良の背中を追いかけたら、襟足がひょこひょこ動くさまが見られるんだろうな♡)  そう考えついて、反射的にゾッとした。自分の思考に、ヤバみを感じずにはいられない。そのことによりバスケ以上に、笹良のことが好きになってしまったのを、思いっきり自覚したのだけれど――。  俺は目をつぶり、困難な自分のイップスについての攻略を考える。これ以上笹良に嫌われないようにしなければと、必死になってあらゆる手を思考したのだった。

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