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第12話

 家族での外食を済ませ、家に帰ってきた俺は冷蔵庫にしまったケーキを取り出した。  母さんにはまだ食うのかと呆れられたけど、甘いものは別腹だって習ったからいいんだ。  俺は部屋に持っていって、それを口にした。  甘い。濃厚なチョコレートが口の中に広がる。アイツからのプレゼントっていうのが癪だけど、美味いものは美味い。 「……明日の朝もいるのか」  どうしたらアイツは諦めるんだ。  アイツの頭の中に諦めるって言葉があるのかどうか謎だけど。  確かにアイツが言う通り、誰が誰を好きになろうと勝手だ。それは俺が指図していいことではない。  でも、俺は嫌だ。  どんなにアイツが俺を真白の代わりにしてないと言っても、それが嘘偽りないとしても、俺はそれを信じる訳にはいかない。  じゃあ真白との約束はどうなるんだ。  俺が真白じゃなくてもいいのか。  真白への気持ちはどうなるんだ。  俺には分からない。どう受け止めて、どう答えを出していいのかが分からない。  俺の前世。真白とその土地の神様であるアイツは神と贄という関係を越えて愛し合った。  村を守るために真白はアイツに食われることを選んだ。生贄としての運命を受け入れた。  そして、約束をした。また会おうと。  俺に会った時点で約束は果たされたことになるのか?  でもアイツは真白を愛していたんだろ。  だったら、そのまま真白を愛せよ。こんなの浮気だろ。  アイツだって自分で言ってた。俺は真白じゃない。真白にはなれないって。  じゃあなんで、真白を愛してるといった口で、俺のことも愛してるなんて言えるんだ。ふざけてるのか。  ああ、もう嫌になる。  頭の中がグチャグチャで考えがまとまらない。何度も考えて悩んで、結局答えが出なくて、また同じことで頭を抱える。その繰り返しだ。  そういえば、最後に見た夢の中でも真白が言っていた。  どんな姿になってもあの人を、って。  真白はいいのか。自分じゃない奴と好きな人が愛し合っても。  ツラくないのか。悲しくならないのか。  俺だったら、嫌だよ。  例え生まれ変わりでも、それは俺じゃないんだ。  だから俺は認めたくない。  アイツが好きなのは真白で、俺じゃない。  そうであってほしい。 「……はぁ」  深く、息を吐き出した。  何度も何度も、俺は同じことを自分に言い聞かせてる。  俺じゃない。俺じゃないんだと。  なんで自分のことを否定し続けなきゃいけないんだ。  こんなの、俺には関係のない過去のことなのに。  何時まで続くんだ。  どうすれば俺は、俺になれる。  教えてくれよ、真白。  勝手に俺の中に現れて、勝手に消えていくな。  消えるなら、この想いも一緒に持っていけ。

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