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第7話 於久とオレ <Side 網野
オレは彼氏、鞍崎 大希 の家に行く途中、近道で公園を抜けていこうと足を踏み入れた。
最近、会っていなかった於久の姿を見つけ、思わず声を掛けた。
於久とは大学の同期になる。
同じ授業を選択していて、大学内では一緒に居ることが多かった。
大学1年の夏。
その日も、適当な相手とホテル街を彷徨 くオレの視界に入ったのは、童貞を喰 らう悪癖で有名な、男にしては魅力的な豹野 先輩と一緒にホテルから出てきた於久の姿。
魂の抜けた顔で、ホテルから出てきた於久に、完全に喰われたなと読んでいた。
翌日、大学の構内にいくつか設置されているベンチで、呆けている於久を見つけた。
「喰われちゃった感じ?」
ニヤニヤとしながら声を掛けたオレに、於久は何を言わんとしているのか探るような瞳を向けた。
右手の親指と人差し指で丸を作り、左手の人差し指を挿れる。
セックスのジェスチャーをして見せ、言葉を足す。
「豹野先輩と一緒にいるの見ちゃった」
「ぁー……」
於久は、疲れと諦めの混じる言葉にならない声を放ち、天を仰ぐ。
「オレ、高校の頃に、ばくっと喰われたんだよねー。お陰で、自分がゲイだって気づいたんだけど」
於久の隣にどかっと座り、同じように真っ青な空を見上げながら、なんでもないことのように暴露した。
女の子でも勃たたないコトはなかった。
でも、豹野先輩に襲われ、今まで感じたコトのない興奮が身体を包んだ。
男性の方がオレの性欲を煽り立てるコトに気づかされた。
「エロ動画見ても、女の子抱いても、反応悪いなぁとは思ってたんだけど」
なんとなしに、自分の股間を弄 ぐりながら言葉を繋ぐ。
「……お前は、ノーマルだった?」
覗き込むように瞳を向けるオレに、於久は顔を顰めた。
「股間、弄ぐりながら聞くんじゃねぇよ」
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