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第27話 こいつの目当ては
ふと、網野に会う前の会話を思い出す。
しゃぶってやるって言ったんだったな……。
冷風を吐き始めたエアコンに、マコトの身体を自分へと向かせた。
俺の唇に反応するように、涎を垂らし、硬さを増すマコトのペニス。
わざとに音を立てながら舐めしゃぶる俺の上から、マコトの声が降ってきた。
「育とヤったの?」
俺の乱れた髪を掻き上げながら、面白くなさそうに紡がれた問い。
育……、網野か。
てか、なんで網野が出てくんだ?
「あ?」
マコトのペニスを咥えたままに、何を言っているんだと問うように、瞳を上げた。
「育に仕込まれたから、フェラ、そんなに上手なんじゃねぇの?」
マコトは、俺と網野の関係を疑った。
会社の先輩と後輩だと言ったのに。
その疑心は、自分を抱ける男とみれば、手当たり次第に足を開く軽いヤツ、…俺が尻軽だと言っているのと同じだ。
そんな軽薄な人間だと思われているコトに、腹が立った。
マコトのペニスをずるりと引き抜き、口の中に溜まる唾液とカウパーの混ざりあった粘液を床へと吐き捨てる。
口を拭いながら、マコトを睨めていた。
「なぁ? 俺のコト、どんだけ節操なしだと思ってるわけ?」
ぐつぐつと煮えるマグマのように熱い怒りが胸を焼く。
「確かにお前と付き合う前は、その辺のヤツとヤってたよ。でも、会社のヤツに手ぇ出すほど飢えてねぇんだよっ」
マコトと出会ったのだって、そういう相手を探す場所だ。
腹の底に燻る熱を解消したくて、その場限りの男を相手に盛っていた。
それでも、…そんな俺でも、最低限の道理は、弁 えている。
端から残すことなく、喰い散らかしていたわけじゃない。
「お前と付き合ってから、他のヤツとシたコトねぇんだけど? そんなに浮気して欲しいのかよ? 手当たり次第、食い散らかせってか? 一途な俺は、俺らしくねぇとでも言いてぇの?」
俺は、誰とでも寝る尻軽ビッチかよ。
「そんなだらしねぇヤツだと思われてたのかよっ」
あぁ、そうかよ。
好きだなんて言われて、思い上がった自分が悪いんだよな。
その言葉の前には、『お前の身体』がっていう接頭語がついていたんだよな?
それなら別に、尻が軽くても問題ないもんな?
ヤることをやれれば、それでいいんだろ?
あまりの苛立ちに、感情が言葉にならなかった。
俺は掴んでいたマコトを胸ぐらに苛立ちをぶつけるように手を放す。
そうだよ。こいつの目当ては、俺じゃない。
俺の『身体』だ……。
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