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第28話 取り乱したりしたくない

「悪い。帰るわ」  辿り着いた結論に、胸が潰れそうだった。  頭を冷やし、落ち着きたかった。  俺はマコトを残し、家を出た。  そういう目で俺を見るのなら。  簡単に誰とでも寝るような軽い男だと思われているのなら。  マコトの目的が、俺の身体なら……。  ……割り切った関係で、いい。  身体だけの関係で…、いいんだ。  気持ちなんて、要らない。  俺の想いなんて、要らねぇんだ……。  自分の家へと向かう電車に乗るために、駅の改札を抜けた。  ホームのベンチに座り電車を待つ俺の背で、スマートフォンが震える。  ショルダーバックからスマートフォンを引き摺り出した。  そこに表示された名に、ズキンとした痛みが胸を刺す。  通話をタップし、それを耳に当てた。 「ごめんなさいっ」  開口一番に、マコトは謝罪の言葉を放った。 「……何が?」  自分でも驚くほどに、冷淡な落ち着いた声が口から零れた。 「……っ。変なコト言って、ごめん」  覇気のない、これ以上落ち込めないと言わんばかりの声色に、小さく息を逃がす。 「いや。俺も、大人げなかった……」  怒鳴って、悪かったな…と続ける俺の言葉に、沈黙が影を落とす。 「どこ? 迎えに……」 「悪いけど、帰る。今日は、……無理だ」  迎えに来ようとするマコトの言葉を遮った。  マコトの顔を見て、冷静で居られる自信がなかった。  これ以上、取り乱したくない。  剥き出しの乱れた心を、マコトに曝したくなど、…ない。

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