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第32話 居心地の悪い時間
休日なのに、オレは早朝に目を覚ます。
普段なら、昼過ぎまで眠っている。
腕の中に柊を抱えて、だ。
独りで目覚めた今朝は、なんだか物足りない。
寂しさに胸が、きゅぅっと切なく鳴いた。
昼を過ぎても、柊はまだ訪れない。
電話を掛けようかとスマートフォンを握り、慌てることはないとテーブルへと戻す。
何度となくその行為を繰り返していた。
電話をしても、出てもらえなかったら…そう考えると、怖くなる。
臆病になっていた。
約束した。
今日、来ると柊が言ったんだ。
柊の言葉を、信じたい。
テレビを見ていても、スマートフォンのゲームをしていても、オレの心はここに在らずで、居心地の悪い時間が過ぎていく。
―― ガチャンっ
正午過ぎに、やっと玄関の鍵が解錠された。
柊が合鍵で扉を開けた音に身体が跳ねた。
手にしていたスマートフォンを放り、玄関へと急いだ。
ゆるりと開いた扉から、柊の姿が見えた。
ちらりと持ち上げた柊の視線と、オレの瞳が交差した。
「あ、の、………」
喉に言葉が、詰まった。
「上がれねぇんだけど……?」
入口に立ち尽くすオレに、玄関に入ってきた柊が困ったように眉根を寄せる。
「あ、ごめん」
オレは、柊を見詰めたままに後退 りした。
靴を脱いだ柊は、無言のままに家へと上がり込む。
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