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第33話 飲み込まれる疑問

「ごめん。あんなコト言うつもりじゃなかったんだ」  ゆるゆるとリビングへと退きながら、謝罪を紡ぐ。  育久との間にある親密そうな雰囲気に嫉妬した。  会社のヤツに手を出すほど飢えてないし、オレと付き合ってからは他のヤツとはヤってないと怒鳴られ、肝が冷えた。  育久との関係を疑うオレに、やってもいない不貞の疑惑をかけられたコトに、そんなにだらしないヤツだと思っていたのかと、柊は怒ったんだ。  確実に、オレの言葉は柊を傷つけた。  オレの嫉妬から生まれた八つ当たり同然の言葉は、柊の心を刺したんだ。 「本当に、ごめん」 「もういい……」  謝罪の言葉に被さるように、面倒そうに紡がれる柊の声は、オレを凹ませる。  どうすれば許してもらえるのかと、必死に考えるオレの横を通りすぎ、リビングへと足を進めた柊の視線は、床から上がらない。  だらしないヤツだなんて思ってない。  だけど、…だったら、なんで? 「でも、なん、……っ」  なんで育久の体温が高いコトなんて、知ってたんだと問いたかった。  オレの疑いを決定付けたのは、それだから。  でも、その言葉は形をなす前に、柊の唇に飲み込まれた。  離れた唇に、叱るような柊の瞳が、オレを睨み上げていた。 「黙れ。もう“ごめん”なんて、いらねぇって言ってんだろ」  柊の言葉に、口づけに、疑問を飲み込んだ。  傷つけた柊の心を癒したくて、でも、その方法がわからなくて、唇を噛み締める。 「シャワー浴びてくる」  背負っていたショルダーバックを無造作に床に置いた柊は、オレの横をすり抜け、バスルームへと消えていった。

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