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第35話 小骨は抜けない

 怒っている訳じゃない。  怒りなんて、通り越している。  マコトに怒ったところで、なにも変わらない。  そう思われてしまったら、それに気づかれてしまったら、それは変えようのない事実だから。  俺が綺麗じゃないのは、真実だから。  ただ、哀しく、寂しく、…虚しくなってきただけだ。  ……捻くれている。  穿った物の見方をしているのは、わかっていた。  表面だけを掬い、ごめんと謝るマコトの言葉を素直に受け取り、無かったコトにすればいい。  でも。  喉に刺さった小骨は、簡単には抜けず、飲み込むことも容易(たやす)くはない。  絡まる舌に、口の中を擽られた。  マコトの大きな手が、俺の身体を這い回る。  されるがままなど、俺の(しょう)に合わない。 「お前も、…っ、脱げよ」  キスの合間に言葉を紡ぎ、Tシャツにジーンズというラフな格好のマコトのベルトに手を掛けた。  喰らいつくように俺の唇を貪りながら、ほんの少し離れた隙に、マコトはシャツを脱ぎ捨てる。  勢いに押されながらも、俺はマコトのベルトを外し、ジッパーを押し下げる。  下着の中に隠されたマコトの大きなペニスは、既に芯を持ち始めていた。  最初はその大きさに慣れず、潮まで吹かされた。  散々ドライでイかされ、潮を吹かされ、息も絶え絶えになっていた俺。  イきそびれた…、射精のタイミングを失っていた俺の股間は、セックスが終わった後でも、硬度を保つ。  モデル料として抱くと言ったマコトは、俺を満足させられていないと、追い撃ちをかけてきたんだ。  終わった後は、身体の至るところが悲鳴を上げていた。  尻、腰、股関節……慣れていない訳じゃないのに、ギシギシと軋んだ音を立てていた。  噛み痕やキスマークだらけの背中も、じんわりとした痛みを放っていた。  キスしていいかとお伺いを立てるマコトに好きにしろといったら、背中にキスマークをつけられた。  キスは勝手にしろと言ったが、痕を残していいと言ったつもりはなかった。  でも、付き合ってもいない…、セックスフレンド程度の関係なのに、まるで自分のものだと主張するように残されるその痕は、俺の心の隅をじんわりと喜ばせた。

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