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第36話 独占欲の証は要らない
口端に、頬に、首筋に…マコトの唇が降りていく。
鎖骨に辿り着いたその唇が強く貼りつく。
「やめろっ」
瞬間的に、俺はマコトの頭を押し止 め、そこから剥がした。
マコトは、いつも決まった場所にキスマークをつける。
セックスフレンド程度の関係だった頃、着飾っている姿しか知らないマコトに、平素な俺を見つけられたら付き合ってもいいと提案した。
しらばっくれられないようにとつけられた鎖骨の上のキスマーク。
付き合ってからも、マコトはその場所にキスマークをつけ続けていた。
マコトのクセのようなものだ。
オレのものだと主張するような、そんな痕つけるなよ。
独占欲など…そんな愛情の証なんて、いらない。
俺は、お前のものじゃないんだろ?
お前の中の俺は、誰かとの共有物なんだよな?
俺の拒絶に大人しく顔を引いたマコトの眉が、ぴくりと引き攣る。
悲愴な面持ちを浮かべるマコトに、なんだか自分が悪いコトをしている気分になる。
「悪い。薄着になるから…見えるだろ。暑くてもシャツのボタン、外せなくなるだろ」
落ち込むマコトに、尤 もらしい言い訳を紡いだ。
誤魔化すように、マコトの股間に顔を寄せた。
下着の上から、そこへと口づける。
「ちょっと待って」
俺を離したマコトは、ベッドヘッド付近に、無造作に置かれているローションとゴムを手繰り寄せる。
履いたままのジーンズを下着ごと脱ぎ去り、ベッドへと仰向けに寝転がったマコトが口を開く。
「足こっち、ね」
自分の顔を指差し、俺の体勢を指示するマコトに、大人しく従う。
恥も外聞もない。
俺は、メガネを外し、マコトの頭を跨ぐように、その身体に乗っかった。
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