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第41話 紡げない疑問

 柊の中へと放つ欲望の飛沫。  それは、薄いゴムに阻まれ、柊を染めるコトは出来ない。  それでも、この熱は柊の身体に浸潤する。  きゅんきゅんと俺を締めつけながら、まるで自慰でもするかのように、自身を扱き上げる。  オレの放った熱に引き摺られるように、柊も身体を震わせ、手の中へと白濁を(ほとばし)らせた。  オレの腹に両手をつき、荒くなった息を整える。  はぁっと大きく息をついた柊は、(おもむろ)に腰を上げた。  オレはコンドームが外れないように、それを押さえ腰を引く。 「ん……っ」  ずるりと抜け出るペニスに、敏感な内壁を擦られた柊は、鼻から甘い吐息を零す。  精液を溜めたコンドームを外し、その口を結んだ。  シャワーを浴びるのが面倒になり、汚れを適当にティッシュで拭う。  コンドームをティッシュと一緒にゴミ箱へと放った。  同じようにティッシュで汚れを拭き取った柊は、ふるりと頭を振るいメガネを手に取る。  オレは、メガネを掛けながら立ち上がる柊の手首を、反射的に掴んでいた。 「どこ、行くの?」  いつもなら、暫くベッドの上で寝転がる…、オレの腕の中で、微睡(まどろ)む時間だ。 「あぁ、帰る」  柊の言葉に、オレは眉を潜めた。 「まだ、昼過ぎだよ?」  ちらりと確認するように見やった掛け時計の針は、2時を指し示す。  オレに手首を掴まれたままの柊の瞳が、そっぽを向いた。 「休み明けまでに、まとめなきゃいけねぇ資料あるんだよ」  嘘だ。  オレの顔を見ようとしない柊に、直感でそう思った。  ………まだ、怒ってる?  思っても、オレには聞けなかった。  怒っていないのなら、やっと落ち着いた気持ちを逆撫でるだろう。  逆に怒っているのなら、火に油を注いでしまう。  キスも、セックスも、応じてくれた。  セックスに至っては、応じてくれたというより、乗り気だったようにすら感じる。  でも、そう簡単に怒りは鎮火しない。  苛立つコトに疲れ、下火になっただけなんだ。  深く刺さった言葉の棘は、簡単に抜けたりしない。  ここまでが妥協点で、オレとまったりとした穏やかな時間を過ごすまで、気持ちが落ち着いたわけじゃない……。  オレは、大人しく柊の手を放すしかなかった。  時間が解決してくれるのを、待つしかない気がした。

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