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第42話 進めない、戻れない
あれから、2週間。
一旦は、柊の苛立ちが消化されるのを待とうとしたオレだが、直ぐに食事の誘いを掛けた。
柊の気持ちが落ち着くまでと距離を取れば、そのまま捨て置かれてしまいそうで、大人しく待っているコトは出来なかった。
駅前で待ち合わせをして、食事にいこうと誘うオレの話が終わる前に、柊の断りの声が耳に届いた。
平日の誘いは、断られ続けた。
以前は、提案してくれていた代替案も出てこない。
ただ、“悪い”とか、“行かない”という一言で断られた。
でも、週末にはオレの家に来てくれたりもする。
セックスもするし、絵を描かせてくれたりもしていた。
日曜日の今日もやっぱり、オレの部屋で柊のヌードを描き、セックスをした。
コトが終われば、柊は直ぐに腰を上げる。
「今日も、……帰んの? また、仕事?」
ベッドに寝転がり、下着に手を伸ばす柊の背を見ながら、不満げな声で問うた。
「まぁな」
歯切れの悪い返事に、柊の声は続く。
「……スッキリしたんだし、いいだろ?」
オレに背を向けたままに放たれた柊の言葉に、胸がチクリとした。
セックスさえ出来れば、それでいいのかよ。
付き合う前みたいな、まるで関係が巻き戻されたような現状に、信頼を得るのは大変なのに、失うのはあっという間だという事実を痛感する。
引き摺りすぎだと苛立つ反面で、それほどまでに柊のコトを傷つけたのかと落ち込むオレもいた。
柊の消えた空間で、急激に降 り下 りた虚しさが胸を占めた。
柊の楽しげな声を、聞いていない。
柊の笑った顔を、見ていない。
そんな顔をするのは、オレのせい……?
オレが、柊から笑顔を奪ったの?
…身体が繋がっていたって、心は離れてく一方な気がした。
それならいっそ、オレは柊の前から消えた方がいいのか?
笑顔に出来ないなら、一緒にいる意味なんてない。
でも、離れたくねぇよ。
オレ……、どうしたらいいんだよ。
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