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第43話 八つ当たりしてやる
答えの出ない問題に、ベッドに寝転がりながら、悶々と悩む月曜の夜。
傍にいるコトで柊が笑えないなら、柊の傷が広がるのなら、オレはこの手は放すしかない。
持ち上げた右手を、掲げ眺める。
ぐっと拳を作り握り締めても、その指の隙間から柊の心が漏れていく気がした。
ベッドの上で呻くオレの耳に、スマートフォンの着信音が響いた。
画面には、育久の名が表示される。
面倒だと思いながらも、画面をスワイプし、電話を取った。
「なんだよ」
鬱陶しげに言葉を紡いだオレに、機嫌の悪そうな育久の声が届く。
「お前、なに無視してんだよ」
育久からのメッセージを受け取っておきながら、なんの反応もしていなかったコトを思い出す。
柊に気を取られ、すっかり忘れていた。
「あー……悪ぃ」
感情の入っていない謝りの言葉を紡ぎながら、身体を起こした。
「…元気なくね?」
訝しむような声で心配する育久に、気のせいだろと虚勢を張った。
「そ? てか、お前、明後日ヒマ?」
肩と顔でスマートフォンを挟み、話ながらキッチンへと足を向ける。
「なんで?」
乾いた喉を潤そうと、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
「飲もうっていたじゃん。平日だけど、いいだろ?」
仕事終わりか。
…もしかして、本当に仕事が忙しくて、オレとの時間も取れないのかと、小さな希望を抱く。
「ん、あぁ……」
時間と待ち合わせの場所を決め、育久との通話を切った。
柊と育久は同じ会社だ。
仕事がそんなに忙しいのか、育久に聞いてみるという手を思いつく。
ついでに少しこのストレスを育久にぶつけて解消してやろう。
元はと言えば、育久が絡んできたせいなんだから。
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