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第48話 目敏い網野 <Side 柊
日を開けずに来ていたマコトからの連絡が、途絶えた。
なんの連絡もなく1週間が過ぎていた。
身体だけでもいいから繋がっていたい惨めな俺。
俺から連絡をしない…それが、せめてもの悪足掻きだった。
自然消滅……。
ずっと隣にいると、手放す気はないと言ったのは、なんだったんだ……?
俺には、わかり得ないマコトの気持ち。
その答えを想像してみたって、自分独りで考えたって、正解になんて辿り着けない。
わかっているのに、考えずにはいられなくて。
悶々とした感情に、思考が引き摺られる。
「小佐田さんっ」
俺を呼ぶ声に、足を止めた。
俺のいる開発部は、営業部や販売促進マーケティング部とはフロアが違う。
上の階にある関連部署に新製品を届け、開発部へと続く階段を一歩下りた時だった。
階段の上にいたのは、網野だ。
俺が届けた段ボールを小脇に抱えていた。
「これ、前の試供品ですよね?」
段ボールの蓋を開け、俺に中身を見せてくる網野に、箱を覗く。
確かに、その中身は新製品ではなく、先日の届けた試供品だ。
「ぅわ。悪ぃ……」
営業部へ持っていった物が間違っているというコトは、他の部署もそうかもしれない。
俺は降りかけていた階段を、再び上る。
「髭、伸びてません?」
フロアに戻ろうとする俺の前へと立ち憚 った網野が、顔を覗き込んできた。
網野の手が俺の頬に伸ばされ、触れる直前にぎこちなく止まり、引っ込んだ。
「剃り忘れただけだ……」
口許を手で覆い、疎らに生えてきている髭を隠した。
本当、細かいコトに目がいくな……。
目敏さに、思わず感心してしまう。
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