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第57話 俺に、そんな資格はない <Side 柊
電話で話すようなコトじゃない。
俺は、仕事帰りにそのままマコトの家へと乗り込んだ。
なんの連絡もなく訪れた俺に、マコトは慌てながらも家の中へと誘った。
リビングへと足を進め、無造作に胡座をかく。
マコトは落ち着きなく、冷蔵庫へと足を向けた。
「網野に泣きついてんじゃねぇよ」
「へ?」
ぼそりと放った俺の声に、振り返ったマコトは素っ頓狂 な音を返した。
拗ねたように視線を外し、先の言葉を紡がない俺に、マコトは、お茶のペットボトルと2つのグラスを持ってくる。
「…ビールの方が、いい?」
ペットボトルをテーブルの上に置きながら問うてくるマコトに、俺は首を横に振るった。
お茶をグラスに注ぐマコトを横目に、俺は再び口を開いた。
「単刀直入に聞く。お前は、俺の身体が目当てなんだろ? 俺の気持ちなんて要らねぇんだろ? 俺のコト、穢ぇクソビッチだと思ってんだよな?」
マコトの顔に視線を据え、自分の考えを口にする俺。
驚いたように何度となく瞳を瞬いたマコトは、片方のグラスだけにお茶を注ぎ、ペットボトルをテーブルに戻した。
言葉の意図を理解しようとするように、暫し固まったマコトは、きゅっと眉根を寄せ、怪訝な顔を俺へと向けた。
「なんで? どう捉えたら、そこまで貶 せんの? それ、自分のコト、貶すのと一緒にオレまで馬鹿にしているってわかってる?」
マコトの言葉尻から、苛立ちがじわりと立ち上っていた。
「………身体だけでいいなら、あんな真剣に謝ると思う? オレは、柊さんの全部が欲しいよ。身体も心も魂も全部ねっ」
面白くないと言わんばかりに、ふっと息を吐いたマトコは、どかっと床に腰を落とし、胡座をかく。
「じゃあなんで急に連絡、寄越さなくなったんだよ? 自然消滅、狙ってんだろ? 傍にいるとか、放さないとか言ったクセに……」
……俺に、マコトを責める資格はない。
俺からだって、連絡をしなかった。
何度も誘われた食事だって、断り続けていた。
愛想を尽かされたって、文句は言えない。
そうだと言われたら、さよならと告げるしかない。
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