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第63話 フォローって何?

 オレの指先を追っていた小佐田さんの瞳は、呆れたように細くなる。 「あのなぁ…。触るんなら触れよ。逆に、…変に意味ありげに見えて気持ち悪ぃんだよ」  ふぅっと小さく息を吐いた小佐田さんは、言葉を繋いだ。 「てか、そんなに酷いか?」  メガネに掛かる小佐田さんの長い前髪。  それを指先で混ぜ、さらに目許が見えにくくなるように、髪を広げる。 「……けっこう」  小佐田さんの瞳は、目尻が微かに赤く染まり、少し腫れぼったく見える。 「でも、気づくのお前くらいだろ」  於久と喧嘩になったのかもしれない。  オレのせいで、泣かせてしまったのかもしれない。  そう思うと、居た堪れない……。 「なんか、すいません」  しょぼんと謝るオレに返ってきたのは、小佐田さんのきょとん顔。 「なんで、お前が謝ってんの?」  不思議そうに首を傾げる小佐田さんに、責任を感じているオレは、さらに縮こまる。 「いや、オレのせいか…と」  ぼそりと放ったオレの声に、小佐田さんの笑い声が被った。 「ふははっ。お前、自意識過剰すぎんだろ」  お前の為になんか泣かねぇよ…と、周りを意識し小声で呟いた小佐田さんは、未だにくすくすと笑っている。 「オレの“為”じゃなくて、オレの“せい”で、最悪の結末とか………」  そんなコトになっていたら、目も当てられない。 「あぁ、心配ない。戻ったから」  あっけらかんとした小佐田さんの声に、今度はオレが、ぽかんとする。 「昨日の仕事帰り、あいつん家行って、ちゃんと話したから。問題ねぇよ。悪かったな」  唖然としている意識を引き戻すかのように、小佐田さんはオレの腕を、ぱんぱんっと叩いた。  すっと吸い込んだ空気を、盛大に吐き出した。  息と共に肩の力が抜けていく。 「良かったっす……」  安心して笑みを見せるオレに、今度は小佐田さんの顔が、きゅっと曇った。 「……てかお前、ちゃんとフォローしたか?」  小佐田さんの言葉に、オレは首を傾げた。 「昨日、俺がお前とミーティングルームに入るとき、すんげぇ顔して見てたぞ」  あえて名前を伏せ、ちらりと鞍崎さんのデスクの方へと瞳を飛ばした小佐田さんに、瞳を瞬いた。 「す、すんげぇ顔って……?」  恐る恐る問うオレに、小佐田さんはなんとも言えない切ない顔をして見せた。 「ぅわ、マジかぁ……」

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