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第66話 堪らない無防備感 <Side 柊

 セックスの後、軽くシャワーを浴びてベッドへと戻った俺は、花火に行く前に体力の回復を図ろうとそこへ転がった。 「どっちかなぁ」  下着1枚でベッドに寝転がる俺に当て、2枚の浴衣を見比べるマコト。  1枚は、濃紺ベースに、白色が編み込まれているもの。  白色はランダムに入っているように見えるが、遠めに見ると腰から裾にかけ巻きつくように蔦が這い、大小さまざまな朝顔が咲く。  もう1枚は、黒ベースに赤が編み込まれているものは、裾で鯉が跳ねている。  どちらも、マコトの働くアパレルメーカーのものだ。  花火大会へと誘った俺に、行くのなら浴衣でと、今年の新作2枚を買い取ってきたらしい。  何度となく、どちらがいいかと見比べているマコトに、視線を窓の外へと飛ばした。  時間は夕方で、日が落ちかけた空はオレンジ色に染まっていた。 「こっち着てみて」  声に向けた視線に、差し出されたのは濃紺ベースの浴衣だ。  ベッドから降り、下着一枚で差し出された浴衣に腕を通した。 「あー…どっちだっけ?」  迷う俺に、マコトの手が伸びてくる。 「右前。右側が先」  話ながらも、手際よく俺に浴衣を着付けていく。  角帯もきっちりと締め、俺の浴衣姿が出来上がる。  口許を片手で覆ったマコトの視線が、何だか…痛い。 「……変か?」  どこかおかしいのかと、腰を捻り、身体全体を確認しようとした。  くっと掴まれた顎に、顔を上げさせられる。  がぶっと噛みつくように合わされた唇に、瞳を瞬く。 「堪んない……っ」  少しだけ離れた唇に紡がれた声。  掠れたハスキーな声色に、ぞくっとする感覚が背を駆けた。  合わさる布を割り開き入り込んできたマコトの指先が、腿を撫で上げた。 「この、無防備感……堪んないわ」 「ヤったばっかだろっ」  逃げようとする俺の腰に回ったマコトの腕に抱き寄せられる。  ぐっと押しつけられるマコトのそこは、ごりっと俺の身体を擦る。  これは、止まらない…、な。  諦め、浴衣を脱ごうと動く俺。  締められた帯にかけた手を、マコトに掴まれた。 「脱がねぇと……皺…」 「だぁめ」  左手で俺の両手を制したマコトの右手が俺の左足を掬う。  浴衣からはみ出る俺の片足が、やけにエロく()えた。 「このままヤろ」  引き出した左足の腿裏を、足の付け根から膝裏へとマコトの指先が擽っていく。

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