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第69話 震える声 <Side 鞍崎
花火大会に誘われ、思いもよらぬ場所へと連れて来られた。
花火の打ち上げを見るには、河川敷がメジャーなのに、連れてこられたのは小高い丘だ。
俺を誘ってここへと来る道中、網野はそわそわと周りを見回す。
まるで誰かを探しているかのようだ。
でもここは、河川敷とは違い、人と擦れ違うコトもないほど閑散としている。
丘陵の途中にあるベンチに人影を見つけた。
網野の瞳も、その人物を映している。
街灯に照らされたその人物は、浴衣姿の……小佐田?
声を掛けようとする網野に、俺の足はぴたりと止まる。
示し合わせるようにそこにいる小佐田に、嫌な空気を感じ取った。
浴衣を着た小佐田は、綺麗で色気もあって、なんの変哲もない自分に、劣等感が降りかかる。
別れようとか、言われるのか?
でも、小佐田は普通に女の子を好きなんだろう?
……違うのか?
やっぱり、網野は小佐田が好きなのか……。
小佐田も……?
「あぁ、……。わかった」
俺は、邪魔なんだ。
理解したと言葉を紡ぐ俺に、網野も足を止めた。
「……なんか変なコト、考えてません?」
俺の顔を覗き込んだ網野の顔に、焦りが浮かんでいた。
「変じゃねぇよ。今までのコトを整理すれば順当な結論だろ」
小佐田の姿を視界に捉えているコトが、胸を掴み、締め上げる。
俺は踵を返し、背を向けた。
小佐田にも、網野にも。
「お前は小佐田が好き、なんだろ。俺と…、別れてぇんだろ……?」
絞り出した声は、震えた。
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