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拒否られました

  翌日、オレは教室に行く前に養護室にいる木下さんに会いに行った。 「神谷くん、お早う御座います」 「あ、お早う御座います」 オレが扉を開けた瞬間、木下さんに朝の挨拶をされる。オレも律儀にソレを返してから、本題に入った。 「実は、αの匂いもβの匂いもΩの匂いも解らないですが、どんな匂い何ですか?」 「否、特長はありません」 木下さんは即決にそう答える。 「えっ、無いんですか?」 ソレは困ったとオレは肩を落としたら、木下さんが、「普通でしたら、一度匂いを嗅げば違いが解るハズ何ですがね?」そう不思議そうにオレを見る。 「はあ?ソレじゃ、オレって普通じゃないって事ですか?」 「そう成りますね?困った事にですが」 木下さんまでオレと同様、肩を落とした。 「ま、ソレは兎も角、神谷くん、項に噛まれた痕がありますが、昨日今日で番になる人を見付けられたのですか?」 そう訊いて来る。 「ハア?番ですか?」 「ええ、Ωはαに項を噛まれたら好き嫌いに関わらず番になるのですが?」 そう説明しませんでしたか?と木下さんはオレを見るが、「項を噛まれる様な事は………?」いいや、そう言う事はして………………………………? して…………………………………………? して……………………? 嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼っ!! ……されたは、強面のお兄さんにっ!! と、昨日ポイした記憶がはっきりと甦る。 「えっ?えっー!!アレって、そう言う意味のガブだったの!?」 オレはそう叫ぶが、木下さんはどう言う事ですか?と冷静にオレに話を訊いて来る。 「あ、背後からいきなりガブって噛まれました。強面のお兄さんに」 オレがそう答えると、木下さんは呆れると言うかもう大慌てでオレの手を引っ張ってその雑貨屋さんに向かった。 「あの、授業は出なくって良いんですか?」 オレはぐいぐいとオレの腕を引っ張って先を急かす木下さんの背中に向かってそう言うと、「今はそう言う心配はしなくとも良いです。ソレよりも、その名刺は何処に棄てたのですか?」真剣にそう訊かれる。 木下さんらしくない真面目過ぎる言動にオレはドキドキさせられた。 「えっ、あ、…その、…覚えていません」 ゴメンなさいとオレが謝ると、木下さんは怒る処か雑貨屋さんにある全てゴミ箱を片っ端からあさり出した。 「え?…ちょ、木下さん!?ソコまでしてくれなくっても…」 オレが慌てて木下さんを止めに入ったら、「神谷くん、Ωが番を解除出来るのは相手のαが死んだ時だけ何です」木下さんに逆にそう叱咤される。 「…え?…木下さん、ソレって、そのαを殺すって言う事ですか?」 オレが素直にそう訊くと、木下さんは違いますっ!!とオレの肩をがっしと掴んだ。 「ですから、Ωからは番の解除は出来ませんが、αからは番の解除が出来るって事です」 「え?解除出来るんですか?どうやって?」 オレがそう喰い付くと、木下さんは呆れる。 「神谷くん、αに強制的に解除されたΩがどうなるか知ってますか?」 「否、知りません」 きっぱりとそう言うと木下さんは項垂れた。 「そうですよね。どうすれば、番になるのかも知らなかったんですからね。良いですか?αに強制的に番を解除されますと、一生、そのΩは番が出来ずにひたすら繁殖期を繰り返すだけの廃れた生涯を送る事になってしまうのですよ」 解りますか?怖い顔で木下さんにそう言われるが、オレは肩透かしを喰らう。 「え、ソレだけですか?もっとこう社会的に混乱に陥るとか、もっとこう言う感じの大それた事件が勃発するとか、そんな事はないんですか?」 「は?そんな事起こるワケがないでしょうが」 木下さんは馬鹿ですか?貴方はとオレの事を凄く残念なヤツを見る顔で、オレを見る。 「ん?ソレじゃ、そう慌てる様な事ではないんじゃないんですか?」 病んで番が出来なくなるくらいで大袈裟なとオレは乾いた口調でそう嗤う。 「神谷くんはソレがどんなに辛く苦しいモノなのかを知らないから、そう言えるのですよ」 木下さんは今まで聞いた事もない低い声で、そう返して来た。 今までとは何か違う必死さがあったが、オレもそう馬鹿ではないから、 「大丈夫です。オレ、一度、自己崩壊していますから、免疫はありますよ」 そう返していた。 強がりとか、そう言う感じのモノではないからと自然と嗤う事が出来る。 「なので、ゴミ箱あさりはもう止めましょう」 オレがそう言うと、木下さんはソレはソレは可愛らしく微笑みまして、「却下です」と、即行で拒否られました。  

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