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噛まれました

  ルンルン気分で、日用雑貨を見ていたら、「お嬢ちゃん、良い匂いがするね?」と、強面のお兄さん(?)に背後から項をかぷりと噛まれてしまった。 「痛、何をするんですか?」 オレは項を噛まれた事よりも噛まれて痛かった事を怒ると、強面のお兄さんに大いに嗤われた。 「君、面白いね♪そうだ、コレお詫び。何かあったら俺んとこ来なさい♪」 そう言って、強面のお兄さんはオレに名刺を渡すとさっさと去って行ってしまった。 「何かあったらって言っても、コレ以上の事はないんじゃない?」 オレは貰った名刺をぐしゃりと握り潰し、ゴミ箱に棄てる。 そう、ゴミはゴミ箱にって言う感じで噛まれた事、ポイっと記憶から抹殺していた。 次の日、木下さんに、「項に噛まれた痕がありますが、昨日今日で番になる人を見付けられたのですか?」と、言われるまでは。 だから、オレはソレまで能天気に日常生活を通常通りに満喫していた。 「歯ブラシに歯磨き粉、石鹸にシャンプー、後は柔軟剤だね」 買い忘れがないかを確り確認をし、オレはレジに並ぶ。 オレの前に並ぶ親子の客を眺めながら、そういや、何で社会的格差がなくなったんだろう?とオレは不意にそう思ってしまった。 また、オレの順番が来て会計を済ませながら提携する様な何かがあったのかな?そうオレは一人ゴチる。 う~ん、何でだろう? オレはそう考えながら雑貨屋さんから出るとその儘家路に着いた。 そろそろ夕方だし、真弥さんも帰って来てる頃だと思ったから。 ソレに、今日はオレの好きなモノばっかりを作って貰おうと言う魂胆もあったからだ。 「只今♪」 そう勢いよく、玄関を開けるともう真弥さんは帰って来ていた。 「ああ、お帰り。ん?今まで買い出しに行ってたのか?」 オレの手荷物を見て、真弥さんは呆れた様にそう言う。 「うん、だって、今日は引っ越し祝いするでしょう。オレの好きなヤツ、一杯作って貰おうと………」 「ああ、ハイハイ。んじゃ、手ぇ洗ってお前も手伝えな」 そう言い、洗面所を真弥さんは顎で示す。 「コレは預かって置いてやるから」 そう言って、オレの手荷物と付けていた髪飾りを受け取った。 真弥さんは髪飾りを見て「お前がこう言うの買うの、初めてだな?」そう言うから、「あ、同級生の女子達に勧められて」とオレが言葉を濁すと、「ああ、オレにって事か?」と真弥さんが答える。 「ま、一応?」 真弥さんの問いに思わず、オレは目を泳がせてしまった。 すると。 「お前、本当、押しに弱いな?どうせ、時次ちゃん可愛い♪って言われて押し付けがましくコレを買わされたんだろう?」 お前自身に。真弥さんに全てを見ていたみたいにそう言われ、「はい、そうです」とオレは肩を落とした。 「やっぱ、Ωは珍しいのか…」 真弥さんがそうゴチるから、「え?オレがΩだって知ってたの?」とオレは驚く。 「当然だろう?一応、コレでも、お前の育ての親何だぞ?」 えっへんと威張るがどう見ても小学生にしか思えない姿に、オレは「そうですね。若いって良いですね」と言ってしまう。 「お前な…」 「あ、じゃ、αの匂いって解る?」 キラキラした瞳でそう訊けば、「時次、何でオレの瞳が紅いのか解るか?」と逆にそう訊かれてしまった。 「いいや」 そうオレが首を横に振ると、「そうだろう?オレも、αの匂い何ぞ知らんよ」とあっさりとそう言われ、「ああ、結局、真弥さんも知らないんだ」とオレは大いに残念がった。 「いや、オレのこの瞳が紅いのは知ってるぞ。オレが鬼人だからだ。この社会にある全ての格差を無くす為に人類の半分を虐殺した殺人鬼何だよ」 オレの返しに真弥さんが真剣な眼差しでそう返して来るから、正直ビビった。 「…え?……………………………あああああ!?」 騙した? 「真弥さん、酷いです。オレ、ソコまで酷い事言ってないじゃん」 オレが若いって良いですねと言った言葉が気に入らなかったらしく、真弥さんに酷い冗談を言われてしまった。 「はっはは、信じる信じないはお前次第だ」 等と更にオレをおちょくって、真弥さんは台所に行ってしまった。 全く、なんちゅう育ての親だと真弥さんに対して腹を立てた事もあって、オレの中では『噛まれました』は、後日談になる。  

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