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乗り出した

  「んじゃ、皆、席に着いたって事で出席は取らなくっても良さそうだな?」 担任はそう言い、出席名簿を閉じると教卓の上に置く。 黒板に大きく、「次は、身体測定」とチョークで書いて手をパンパンと叩いた。 チョークの粉が宙に舞って、ふわりと床に落ちて行く。ソレを開いていた窓から入って来た風がさっと誘って行った。 「男子はこの教室で、女子は隣の教室で着替える様に。他の男子生徒も入って来るから、女子は忘れ物をしない様に移動する事」 解ったか?と教室を一瞥すると担任はHRまでには測定を終わらせて、教室に帰って来る様にと言った。 「じゃ、五十嵐と宮下。後は頼んだからな」 そう言って、担任は出席名簿を持って教室を出て行く。 その際、「神谷、後から職員室まで昨日のプリントを取りに来いな」そうオレに気を使ってそう言い残して行った。 五十嵐との会話を聞いていたらしく、担任は五十嵐にも手を振った。 一緒に取りに来いと言う感じだったから五十嵐はオレを見て、「俺も職員室に用事があるから一緒に行こう」と誘ってくれた。 一人で心細いから木下さんに一緒に来て貰える様に頼もうと思っていた矢先だったから、正直助かったと思った。 「有難う御座います、五十嵐さん」 オレが微笑むと、緑川が背後から抱き付いて来た。 「Ωちゃん、身体測定、一緒に廻ろう?」 浩ちゃん(五十嵐の事)も一緒に廻るよね♪と五十嵐の方に視線を向ける。 五十嵐は体操服を持って、「そうだな。学校案内を兼ねて廻ろうか?」そうオレに言って来た。 だから、オレは体操服を抱えて「お願いします」と五十嵐に頭を下げる。 「フッフ、Ωちゃん、緊張し過ぎ♪」 そう固くならないで良いよ。 緑川はオレに抱き付いた儘そう言い、Ωちゃんの匂い、いい匂いと言ってクンクン匂いを嗅ぎ出す。 何か、エロいおっさんみたいでオレが困っていたら五十嵐が尽かさず、 「緑川くん、神谷くんが着替えられないって困っているよ」 あんまし馴れ馴れしく抱き付かないのと軽く牽制まで引いてくれた。 「五十嵐さん、助かりました」 オレがそう言うと、少し照れた顔で当然の事をしたまでだよと男前な所を見せて来る。 学級委員は大変だったなと思いながら、オレは体操服に着替えた。 残っていた女子も隣の教室に移動したみたいだったし、オレの上半身を見てもそう騒ぐ女子達ではないと思っていたからだ。 オレが着替えている間、隣のクラスの男子にガン見されていた事は知らなくても良い情報なので、直ぐに抹殺する。 「五十嵐さん、着替え終わったら何処から廻る予定何ですか?」 一応、クラス毎に廻る順番があるらしく、オレは配られていた配置図を見ながらそう聞く。 「んん、校内の造りからしてそうだな、ココからぐるっとこう言う風に廻るのはどう?」 無駄なく、学校内も案内出来るしと言うと緑川がうんそうだねと答えていた。 入試の時と学校紹介の時に大まかな校内図は貰ったけど、美術室や家庭科室、多目的室等の特別教室は教えて貰っていなかったから軽く場所を知って置くと後々が楽そうだ。 「音楽室と化学室は別館だから、この後に案内して上げるね」 五十嵐はそう言うと、オレの手を掴んで行こうか?と少し屈んで上から覗き込むようにオレの顔を見る。 女の子にすると、多分、喜んで笑顔でうんと答えるのだろうけど、オレは男だからそんな事をされても恥ずかしいだけでそっと視線を外した。すると、緑川が再び抱き付いて来て、オレは自然と緑川の顔を見る事になるのだが。 そんなオレを五十嵐はぐいっとオレの身体事引き寄せた。 えっと言う顔で、引き寄せられるが儘オレは五十嵐の顔を見上げる事になる。 五十嵐と直で視線が合い、オレは「どうかしましたか?」そうオレが赴く儘の言葉を紡ぐと五十嵐は困った様な顔をして、 「否、急がないと時間がなくなるから」 そう言うと、緑川に神谷くんが歩き難いから離れてと再び抱き付いた事を注意していた。 オレが不思議そうな顔で首を傾げると、緑川が急にオレの腕を掴んで五十嵐諸とも廊下の外へ走り出した。 「ちょ、緑川さん?」 「急いで。最後尾になったら、後片付けをしないといけないらしいよ」 配置図が載ったプリントの左隅に小さく書かれた注意事項を目にして、緑川が慌てた様に廊下を走り出す。 だが、廊下は静かに歩きましょうが鉄則だからオレは、「緑川さん、廊下は走っちゃダメ何ですよ」と注意する。 緑川はオレの方に振り返りながら、「だけど、もう俺らのクラス、体育館に向かってるんだよ?」と、隣のクラスの男子生徒が何人か残っている教室を横切って、緑川は早く早くと急かす。 五十嵐とオレは、少し顔を見合わせて「廊下は走ってはいけません」と声を揃えて、緑川の腕を軽く引っ張った。 そんな感じでオレは学校案内を含めた身体測定に乗り出した。  

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