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第一章・4
「起きて。ねえ、起きて……」
体を優しく揺すられ、秀也は甘えた声を出した。
「う~ん、もう少しだけ寝かせて……」
掛布を抱きしめ寝返りを打つと、今度はやや大きな声で起こされた。
「ダメだよ。これ以上寝ると、遅刻だよ!?」
「はッ!」
夢じゃない!?
てっきり、夢の中で母さんが起こしに来たと思ったのに!
慌てて起きると、そこには初見の他人が立っていた。
いや、写真でその姿は確認済みではあるが。
「宮園 茉理!?」
「おはよう」
なぜ、彼がここに!?
目を瞬かせ、口をぱくぱくさせる秀也に、茉理は明るく笑いかけた。
「朝ご飯、できてるから。早く来てよね」
そうして、一階へ降りて行ってしまった。
「まだ夢を見てるんじゃ……」
念のため頬をつねってみたが、普通に痛い。
とりあえず制服に着替え、秀也はキッチンへ降りた。
父に、今の状況を確認しなくてはならない。
「昨日の今日で同居、なんて聞いてないっての!」
文句の一つも言おうと、構えていた。
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