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第一章・6
でも、と茉理は唇を尖らせた。
「茉理くん、だなんて他人行儀だな。茉理、って呼んでよ」
「いいのか?」
「いいよ。僕は、何て呼べばいいのかな。お兄ちゃん?」
秀也は、途端にくすぐったい気分に襲われた。
「お兄ちゃん、は少し幼くないか? せめて、兄さん、とか」
「秀也兄さん、でどう?」
「年齢、1年しか違わないんだし、秀也でも構わないけどな」
「じゃあ、気分で呼ぶよ。いろいろ言ってみて、一番しっくりきた呼び方を決めるよ」
「好きにしてくれ」
「うん、秀也お兄ちゃん♡」
「それは、やめろ!」
屈託なく笑う茉理は、写真で見るよりずっと可愛く見えた。
(素直そうだな。これなら、うまくやっていけるかも)
ひとまず安心した秀也は、残りの朝食を平らげると席を立った。
「俺は今から学校に行くけど、茉理はどうするんだ? 高校、どこだ?」
「兄さんと同じ高校に、転入したよ」
「何ッ!?」
一緒に登校しよう、と秀也の腕を取る茉理だ。
(何か、トラブルの予感がする!)
茉理に引っ張られながら、秀也は汗をかきながら登校した。
忘れられない3ヶ月の始まりだった。
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