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第三章 初恋の人と、怪しい男。
明るく素直な性格の茉理は、新しい高校にもすんなり溶け込めたようだった。
時々、友人を自宅に招いて遊ぶこともあった。
「ごめんね、兄さん。隣の部屋で勉強してるのに、騒いだりして」
「別にいいよ。集中してると、気にならないから」
そして。
夕食後、お風呂に入って勉強を始める秀也の部屋に、必ず茉理は現れるようになった。
「頼むよ、茉理。こいつはもう、お手上げ」
「いいよ。どの問題?」
秀也は、1年年上である兄の自分より学力の高い茉理を、頼るようになっていた。
転校する前は、有名進学校に通い、塾でも学んでいた茉理。
高校2年生でありながら、すでに大学受験に臨む知識を身につけていたのだ。
「僕、小さい頃に秀也お兄ちゃんに助けてもらったからね。今度は、僕がお兄ちゃんを助ける番だよ」
「頼りにしてるよ」
以前、茉理が口走った言葉。
『秀也お兄ちゃん、僕のこと思い出した?』
『忘れてるよね。一度しか、会ってないんだもん』
この件に関しては、彼の口から説明があった。
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