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第三章・3

「あの時、兄さんが助けてくれなかったら、僕はそのまま変質者の餌食だったよね」 「そうだったのか。あの時の……」  その後、我が子を見失い血相を変えた敬が、茉理を探しに来た。 『僕、このお兄ちゃんに助けてもらったんだ』 『ありがとう。君の名前は?』 『賀来 秀也です』 『すると、賀来さんの息子さん?』 『父が、お世話になってます』 「お父さん、賀来 敏郎の大ファンだったからね。まさか、結婚までするとは思わなかったけど」  でも、おかげで兄さんに会えた、と茉理は笑った。 「僕の、初恋の人。兄さん、大好き♡」 「い、一度助けただけで、大げさだな」 「ね、今夜は安全日だから中出ししてもいいよ?」 「ダメだ。受験勉強が第一だ」 「けち~」  初日に一度愛し合っただけで、秀也は茉理を抱くことはなかった。 (恩人だ、なんて考えてくれてるなら、なおのこと兄らしくしなきゃな)  そんなストッパーが、かかっていた。  しかし、茉理の秀也に対する想いは、日ごとに募っていた。  そしてある日、事件が起きたのだ。

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