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第三章・4
放課後の下足棟で、茉理は時々秀也を待った。
今日は、行きつけのカフェで新作のフレーバーが発表されたのだ。
「兄さんと一緒に飲んだら、美味しいだろうな♡」
そんな考えで、兄を待った。
「兄さん、一緒に帰ろう!」
「うぁ、びっくりしたぁ!」
人が見ていなければ、腕を組む勢いの茉理だ。
目に見えない尻尾を、ちぎれんばかりに振っている。
「ね、途中で寄り道しようよ。ラッキーズのシェイク、新しくなったんだ」
「まぁ、たまにはいいか」
二人で校門まで来たところで、秀也の顔が急に曇った。
「?」
茉理が秀也の目線の先を見ると、そこには私服の男性が立っていた。
(大学生?)
兄さんの友達かな、と思っていると、男は馴れ馴れしく秀也の肩に腕を回した。
「よぉ、久しぶり。元気にしてたか?」
「……お久しぶりです、袴田(はかまだ)さん」
秀也の顔つきからして、喜ばしい再会ではないらしい。
茉理は警戒しながら、成り行きを見守った。
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