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第四章・2
「袴田さん。兄さんなら、補習で遅いですよ」
「ん? あぁ、賀来の弟か」
袴田は、ずいと茉理に近づいた。
(やっぱ、このコロン臭い……)
眉をひそめる茉理に、袴田はへらりと言ってのけた。
「弟くんが、5千円ほど貸してくれてもいいんだけど」
「ちゃんと、返してくれるんでしょうね」
「当たり前だろ~」
嘘だ、と茉理は鋭く言った。
「元気いいなぁ。兄貴と違って」
賀来は聞き分けのいい男なんだけどな、と笑う袴田がずうずうしい。
(兄さんが優しいからって、図に乗って)
この男は放っておくと、一生兄さんに付きまとうに違いない。
茉理は、秀也を救いたかった。
今度は僕が兄さんを助ける番だ、と思った。
「もう兄さんからお金、取らないでください!」
「お断り。あんな便利な財布、他にないからね」
「お願いします。僕、何でもしますから!」
マジか、と袴田はそこでようやく茉理をまともに見た。
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