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第五章・5

 秀也は、袴田にありとあらゆる暴行を働いた。  殴り、蹴り、噛みついた。  頭髪を掴んで引きずり回し、壁に何度も顔を打ち付けた。 「やめなさい、賀来!」  恐れをなした生徒が呼んできた教師に取り押さえられるまで、秀也は荒れ狂った。 「兄さん……」  そんな兄の姿を、茉理は呆然と見ていた。  地面や壁には、袴田の赤い血の跡が残っている。  警察までやって来て、茉理も参考人として連れて行かれることとなった。 (兄さん、あんなに激しく怒って)  見たことのない、兄の一面。 (僕が、袴田さんに犯されたから怒ったの?)  そこまで、自分は兄に大切に思われていたのか。  ちっとも抱いてくれないと、その愛情不足に不満を覚えていた茉理だったが、事実は全く逆だったことに気づかされた。 (兄さんは、僕が大切だったから。愛してくれてたからこそ、身体に触れて来なかったんだ) 「兄さん。ごめんなさい、兄さん……」  ぽろぽろと涙をこぼし、茉理は泣いた。  秀也のために、泣きじゃくった。

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