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第五章・6
「あぁ、娑婆の空気は美味いなぁ!」
「大げさだな、兄さん」
秀也は一晩警察のご厄介になったが、翌朝には解放された。
学校側から暴力行為の罰として、一週間の謹慎をくらったが元気だった。
警察が、袴田の悪を認めてくれたからだ。
叩けば叩くほど、埃の出て来た袴田の素行。
秀也のように金銭を巻き上げられる少年は他にも大勢おり、また茉理のように性的暴行を受けた人間もいくらでもいた。
スマホやパソコンには、その時の陰惨な動画が何本も残されており、それで脅しや強請を働いていたことも明るみになった。
違法ドラッグまで押収され、袴田は本格的に逮捕されることとなった。
「茉理、改めて言うけど」
「なに?」
「ごめんな。俺のせいで、辛い思いさせて」
「あ……」
茉理は、秀也から思わず眼を逸らした。
袴田に犯された傷は、まだ癒えてはいない。
その傷心をさらされるのは、辛かった。
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