37 / 96

第五章・6

「あぁ、娑婆の空気は美味いなぁ!」 「大げさだな、兄さん」  秀也は一晩警察のご厄介になったが、翌朝には解放された。  学校側から暴力行為の罰として、一週間の謹慎をくらったが元気だった。  警察が、袴田の悪を認めてくれたからだ。  叩けば叩くほど、埃の出て来た袴田の素行。  秀也のように金銭を巻き上げられる少年は他にも大勢おり、また茉理のように性的暴行を受けた人間もいくらでもいた。  スマホやパソコンには、その時の陰惨な動画が何本も残されており、それで脅しや強請を働いていたことも明るみになった。  違法ドラッグまで押収され、袴田は本格的に逮捕されることとなった。 「茉理、改めて言うけど」 「なに?」 「ごめんな。俺のせいで、辛い思いさせて」 「あ……」  茉理は、秀也から思わず眼を逸らした。  袴田に犯された傷は、まだ癒えてはいない。  その傷心をさらされるのは、辛かった。

ともだちにシェアしよう!