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第六章・5
始めは、何のことはない平和な鑑賞会だった。
ところが、10分ほど経ったころからメンバーの一人が妙なことを言い始めたのだ。
『ね、何か音が聞こえない?』
『音、って、どんな?』
『耳鳴りみたいな、甲高い音』
動揺し始める、メンバー。
秀也は、茉理の様子を食い入るように見守っていた。
『今、そこに! 何か白いものが動いた!』
『嘘!』
『あたしも! あたしも見た!』
『キャーッ!』
女の子の悲鳴と共に、秀也も声を上げていた。
その子が、隣にいた茉理に抱きついたのだ!
「あーッ! よせ! 離れろ、女子!」
秀也の声が届くはずもなく、女の子はしっかり茉理にしがみついて離れなくなってしまった。
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