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第七章・8

「兄さん、やろうよ。二人でお仕事できるなんて、夢みたいだ~♡」 「俺は受験生だぞ!? よそ見なんかしてるヒマ、ないんだぞ!?」  そうか、秀也くんはそういう考えか、と斎藤は鼻を鳴らした。 「大切な弟のCMデビュー、フイにしてもいいわけだ?」 「どういう意味です?」 「秀也くんがOKできなければ、茉理くんのCM出演も流れるかもしれない、ってこと」 「そんな馬鹿な!」  この業界、興味を持ってもらえてこその命だ。  茉理の『秀也お兄ちゃん! 僕、頑張ったよー!』に、視聴者は、G&W広報担当者は喰いついた。 「そのお兄ちゃんが、どんな人間か、みんな知りたがってる。これ以上の材料はないよ」 「う……」  秀也は、茉理を見た。  必死な眼差しが、こちらを向いている。  だがしかし。 「兄さんが、どうしても嫌だっていうなら、僕はこのお仕事を諦めてもいいよ?」 「茉理」  その一言が、秀也を強く動かした。

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