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第八章 罪悪感

 斎藤の指示で髪をカットし、斎藤の指示でスキンケアをし、斎藤の指示で眉カットをし、斎藤の指示でファッションを整えた秀也は、見違えるほど垢抜けた。 「兄さん、超絶カッコいい!」 「そうか?」  茉理に褒められるのは嬉しいが、鏡の中の人間が自分ではない気分だ。 「茉理くんが可愛らしいので、秀也くんは少しワイルドにしてみた」  斎藤は、自分の目に狂いはなかったと頷いている。 「秀也くんには、内に秘めた野生を感じたからね」 「そうでしょうか……」  秀也は、以前袴田に暴行を働いた自分を思い出していた。 『袴田! てめぇえ! よくも茉理を! よくもッ!』  ただ怒り狂って、嵐のように暴れた。 (あれが『内に秘めた野生』っていうんなら、しっかりと手綱をかけておかなきゃな) 「あ、クライアント来たよ」  斎藤の声に我に返った秀也は、背筋を伸ばした。

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