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第八章・5

「秀也くん、気に入っちゃった。ねね、エッチしよう」  すっかり裸になってしまった牟田は、踏ん張って動かない秀也の腕をぐいぐい引っ張る。 「ちょ、待ってください! 俺、そんなの嫌です!」 「え~、セックスしたくないの? 若いのに?」 「初対面の牟田さんと、そんな!」  一回だけでいいからさ、と牟田は気味の悪いウインクをした。 「契約祝い、ということで」 「イヤです!」  頑なな秀也に、牟田は口を尖らせた。 「じゃあ、いいよ。CMの件は、無かったことにしちゃうから」 「ええっ!?」 「うちはG&Wさんの、お抱え事務所だからね。僕がごねれば、他の子を使わざるを得なくなるよ」  そんな。  秀也は、茉理を思った。  不安げに、手を握ってきた茉理。  採用に、喜んでいた茉理。 (茉理のためだ!) 「ホントに、一回だけですよ」 「やった♡」  秀也は震える手で、牟田の身体に触れた。

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