66 / 96
第八章・7
「キス、してもいい?」
「何だよ、突然」
「いいから。ね、キスしようよ」
「今、気分じゃない」
やっぱりおかしい、と茉理は勘付いた。
いつもなら、照れながらも応じてくれるのに。
(それに兄さん、何だか暗い)
落ち込んでいる様子が、秀也には見られた。
「兄さん、僕と別れた後で何かあった? 牟田さんに、何か言われた、とか」
「ち、違うよ」
話が核心に近づきつつあったので、秀也は焦って席を立った。
「勉強するから、邪魔しないでくれよ?」
「うん……」
二階へ上って行く秀也を、茉理は不安げに見ていた。
ともだちにシェアしよう!