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第八章・9

「……ん?」  身体をまさぐる何かの気配に、秀也は夜中に目覚めた。 「……さん。兄さん。秀也お兄ちゃん……」 「茉理?」  ダウンライトの中の茉理は、素裸だった。  白く浮かび上がる肌を、茉理は必死に秀也に擦り付けていた。 「どうしたんだ、茉理」 「欲情しちゃった。兄さん、僕を抱いて」  仕方が無いな、と秀也は体を動かし茉理を抱いた。  滑らかな肌が、手のひらに心地いい。 (その割には、フェロモン薄いみたいだけど)  本気で発情した茉理は、抑制剤を飲んでいても、αの秀也を誘惑するほどのフェロモンを発する。  今夜は、それほどでもないようだ。 (一度抱いてあげれば、満足して眠るだろ)  そう思って、弟にキスをした。  身体を弄り、その甘い汗を舐めとり、体内に侵入しようとした。  だがしかし。 「嘘、だろ……」 「兄さん、どうしたの?」  秀也のペニスは萎えたままで、茉理を悦ばせることができなくなっていたのだ。

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