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第九章 愛の言葉を閉じ込めて
「待てよ、このッ。何でだよ!」
秀也は元気のないペニスを自分で扱いたが、一向に勃ち上がる気配が無い。
「兄さん、無茶しないで」
「ごめん。ごめんな、茉理」
うなだれる秀也に、茉理はすがった。
「いいよ、兄さん。僕の方こそ、ごめんね。疲れてるのに、起こしちゃって」
「違うんだ……」
「えっ?」
この不能はおそらく、昼に牟田を抱いたせい。
彼と寝た嫌悪感と罪悪感が、精神的に自分を追い詰めて、それが身体にも表れた。
そう、秀也は自己分析していた。
「茉理のいないところで、他の男と。天罰が当たったんだよ、きっと」
「兄さん」
茉理は、秀也を責めるどころか優しくいたわってきた。
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