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第十章・7
「いいんじゃない? 若い子の感性は大切だよ」
それは、番組の司会者を務める大物芸人だった。
「Ωを貶めて笑いを取る時代は、終わったのかもしんないよ?」
「時津(ときつ)さん」
時津は秀也の肩をぽんと叩くと、茉理の方を見た。
「席狭いけど、二人で一つに座ったら? 二人で話し合いながら回答するスタンスで行こう」
その言葉にスタッフは椅子の準備に走り、ディレクターはうなずいて席に戻った。
斎藤は秀也に小言を言おうと歩み寄ったが、時津に制された。
「今日は、勉強させてもらったよ」
にこっ、と人懐っこい笑顔を向けられると、斎藤も黙るしかない。
「あんまりわがまま言ってると、仕事が来なくなるぞ」
それだけ言って、部屋を出ていった。
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