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第十章・8

「時津さん、ありがとうございました」  頭を下げる茉理にひらひらと手を振ると、時津は飄々と言った。 「俺も昔、Ωの子と付き合ったことあるんだよね。辛いこと、いっぱいあったよ」  君たちは、負けるなよ。  そう言って、時津は去って行った。 「兄さん。秀也お兄ちゃん、ごめんね」 「いいから。もう謝るなよ、茉理」  いや、俺がそう仕向けてるんだな。 「ごめんな、茉理。ホント、ごめん……」 「お兄ちゃん、もう泣かないで」 「茉理、お願いがあるんだけど」 「何、なに?」  まだ眼の赤い秀也に、茉理は身を乗り出した。 「お兄ちゃんの言うこと、何でもきいてあげる!」 「膝枕、して」 「ええっ!?」  お兄ちゃん、幼児退行しちゃった! 「仕方ないなぁ」  茉理は、ソファに深く座った。  その膝の上へ、秀也はそっと頭を乗せた。

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