84 / 96
第十章・8
「時津さん、ありがとうございました」
頭を下げる茉理にひらひらと手を振ると、時津は飄々と言った。
「俺も昔、Ωの子と付き合ったことあるんだよね。辛いこと、いっぱいあったよ」
君たちは、負けるなよ。
そう言って、時津は去って行った。
「兄さん。秀也お兄ちゃん、ごめんね」
「いいから。もう謝るなよ、茉理」
いや、俺がそう仕向けてるんだな。
「ごめんな、茉理。ホント、ごめん……」
「お兄ちゃん、もう泣かないで」
「茉理、お願いがあるんだけど」
「何、なに?」
まだ眼の赤い秀也に、茉理は身を乗り出した。
「お兄ちゃんの言うこと、何でもきいてあげる!」
「膝枕、して」
「ええっ!?」
お兄ちゃん、幼児退行しちゃった!
「仕方ないなぁ」
茉理は、ソファに深く座った。
その膝の上へ、秀也はそっと頭を乗せた。
ともだちにシェアしよう!