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第十章・9
見下ろして来る茉理の眼差しは、優しく澄んでいる。
(αって、Ωを見下ろすことが多いけど。茉理は今、αの俺を見下ろしてるんだ)
そんな関係のαとΩは、この世にどれくらいいるんだろう。
「冴えないαを見下ろすΩの茉理くん。どんな気持ち?」
秀也の言葉に茉理は眼を円くしたが、すぐに笑顔に戻った。
「お兄ちゃんは、冴えないαなんかじゃないよ」
最高にカッコいい、僕の恋人。
「秀也お兄ちゃん、好き。大好き。愛してる」
「お、おい」
どんどん茉理の顔が、近づいて来た。
そのまま、唇を重ねて目を閉じた。
「ん……」
柔らかい、茉理の唇。
あったかい、お兄ちゃんの唇。
静かに、静かに、時間が来るまでキスをした。
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