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第十一章・4
「だけど、お土産はちゃんとあげるよ」
敬が、柔らかそうな布で包まれた小さな袋を二つ取り出した。
「アフリカで、宝石の採掘体験をしたんだ」
宝石を買う、のではなく、わざわざ自分で採掘する、という点が敏郎らしい。
秀也は、付き合わされた敬を気の毒に思った。
「すみません。父と一緒なら、何かと苦労したんじゃないですか?」
「楽しかったよ! 敏郎さんと一緒なら、何でも面白かったんだ」
恐縮しながら秀也は布袋を受け取り、茉理はさっそく中身を取り出した。
「わぁ……、きれい。紫がかった、不思議な青」
「これ、サファイア?」
タンザナイトの原石だ、と敏郎はにっこり笑った。
「いずれ加工して、装飾品にしてもいいぞ」
「ありがとう」
秀也は、素直にそう言った。
原石、という点が自分らしい、とも感じていた。
俺はまだまだ磨きの足りない、荒削りの未熟者なのだから。
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