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第十一章・5

「そっちは? 何か変わったことは無かったか?」 「変わったことだらけだったよ」 「僕、お仕事いっぱい来るようになりました!」  それなんだけど、と敬が心配そうな顔つきになった。 「さっきも言ったけど、秀也くんに迷惑かけてない?」  迷惑なんて、と秀也は慌てて両手を振った。 「社会勉強させてもらいました。おかげで、将来のビジョンも見えてきました」  将来のビジョン、と敏郎は不思議そうに言った。 「お前、将来は公務員になって、安定した平穏な生活を手に入れるんじゃなかったのか?」 「俺、法律関係の仕事に就きたい」  秀也は、先だって茉理がΩであるために不当な扱いを受けたことを語った。 「αだβだΩだ、って、縛られずに生きられる社会を作りたいんだ。Ωだから他に比べて劣ってる、なんて思い込みを、無くしたいんだ」  ふぅむ、と敏郎は唸った。  こいつ3ヶ月見ない間に、いっぱしの口を利くようになった! 「御大層な決意だが、前途は多難だぞ?」 「頑張るよ、俺」  そして、いつかの茉理みたいにVサインして言うんだ。 『茉理! 俺、頑張ったぞー!』

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