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第十一章・6

 両親を一階に残し、二人は二階へ上がった。 「びっくりしちゃったな」 「何が?」 「兄さんが、法律の勉強したいって思ってること、初めて知ったから」 「いいそびれてたな。ごめん」  クイズ番組で、茉理がやらされそうになった『おバカなΩ』。  あれは未然に防いだが、同じような目に遭って苦しんでるΩの子は、きっとたくさんいる。 「だから、そんな人たちのために。そんな人たちの人権を守るために、俺は働きたいんだ」 「兄さん、すごく大人に見えるぅ」 「俺なんか、まだまだだよ」  でも、と茉理が少しすねて見せるのはなぜだろう。 「僕以外のΩの子と、仲良くなったりしないでよ? 悩みを聞いてるうちに、恋に発展なんかさせないでよ?」 「それは大丈夫。一番に目を光らせてるのは、茉理の仕事だから」  これから先、芸能界で働いている中で、Ωだからって不利益な要求されたら俺に言うんだ、と秀也は胸を張った。 「法に訴えて、全部帳消しにしてやる!」 「お仕事、来なくなりそう……」

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