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独りを感じる時
佐伯はゲイだった。同性の男しか好きになれない。まだ十代半ばの時、それに気づくと同時に結婚だとか家庭だとかは諦めた。自分は、当たり前の幸せを手に入れることは叶わないのだと知った。
だから若い頃は刹那的な恋愛に明け暮れた。ワンナイトラブなんて数え切れないほど経験した。
そんな恋愛に飽き、疲れたのは二十代も終わりの頃だったか。ゲイバーはゲイバーでも、出会いを求めるバーより飲むためのバーに行くことが増えた。束の間の相手を探すのではなく、ただ会話と酒を楽しむだけの時間は心地よかった。
ーーそれでも、人恋しさを感じる瞬間はあった。
例えば、仲の良い常連客がパートナーと共に来店した時。バーの閉店時間になり、誰も待っていない家へと帰らなければいけなくなった時。
そういう時佐伯は、たまらなく自分は独りだなぁと思ってしまうのだった。
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