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灯りの点る家
賃貸マンションの一室、1LDKの部屋。ほぼ寝に帰るだけだったその場所で長く過ごすようになったのは、橋本と関係を持つようになってからだった。その一ヶ月後には、帰ってきたら部屋に電気が点いているのが当たり前になっていた。
今日も例によって窓からは灯りが漏れていて、橋本がもう部屋にいることを知らせている。佐伯は深呼吸を一つしてから、鍵を差し込んでドアを開けた。
「ただいま」
「……おかえり、佐伯さん」
ソファに座ってテレビを見ていた橋本が振り返り立ち上がる。リモコンを操作してテレビの電源を落とすと、こちらへ歩み寄ってきて佐伯の冷え切った頬にそっと触れた。暖房の効いた室内にいた橋本の指先は温かい。
「寒かったっしょ……コーヒー淹れますね」
だが、その指先はすぐに離れ、橋本はキッチンへと入っていった。ありがとうとつぶやいて、佐伯も室内へと入った。
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