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第4話

比べないでって言ってるのに 比べられる 『やだって言ってるのに』 「何がだ?」 『日向も日向だよ』 「だから何がだって」 ふん、とそっぽを向くとい 日向は話題を変えてきた 「雪は1年に手出されてねえか?」 『うーん、何故か1年に顔見られると逃げられるんだけど』 「お前が1年のトップしめたからだろ」 『あー、そういえば』 「そういえばってお前よー」 いや、だって、 シメたって自覚ないから 『ねえ、体育祭で勝ったらぼくのこと』 認めてくれる?って聞こうとした 「去年は最高だったよなー!朱里くんとキサキ!」 という言葉に遮られて言葉を止めた 『…去年は勝ったの?』 教室を出て行こうとする日向の腕を捕まえた 「あぁ。当たり前だろ」 『じゃあ!今年は僕が勝つから!』 「は?僕がって…つか大きな声出すなよ、きゅうに」 『そんなことより!』 「だからなんだよ、声でけえって」 『2年が勝って、僕が勝ったら』 「勝ったらなんだっていうんだよ」 『ちゃんと見て、僕のこと』 「は?なんの話だよ」 朱里くんじゃなくて 僕は僕でちゃんと、ここにいる事をわかってほしい 比べられたくない 『僕は僕だから、』 「僕がじゃなくて俺たちがだろ?」 『は?』 「勝つのだよ。お前だけじゃなくて、もちろん俺たちも勝つって気合い入れてんだ。1人で勝とうとすんじゃねえ」 『じゃあ、勝とう』 「ったりめーだろ」 勝ったら 比べないでほしい 勝つのは、朱里くんじゃなくて 僕なんだから なんだろう、このもやもや 勝てば変わるかな 僕はこの学校を制覇しにきたんだ 朱里くんの代わりになる為に来たんじゃないのに 「雪、帰りにゲーセン寄ってこうぜ」 『え?ぼく?』 「お前以外誰がいるんだって」 『行く、行くから!連れてって』 と、急いでバッグを持って 日向の後を追いかける 「ゲーセンの後スタバ行こうぜー」 『行く。新作のアフォガートラフラペチーノ飲む』 「詳しいなお前」 普通じゃないかな、それくらい 「キサキもこれっかなー?」 『誘ってみよ』 と、隣のクラスのきさきの所に行くと 帰る準備をしていたきさき 『きさきー、遊びに行こ』 「なんで俺が。大体まだお前とはそんな話した事も無いだろう?」 『日向が、ゲーセンとスタバ行こって』 「人の話を聞け」 「いいじゃん。行こーぜ。特別にスタバは奢ってやるよ」 『日向イケメン。すき』 「現金なやつ」 なんと言われようといい、と思って笑ってごまかした 今日はジムが休みだからってきさきもついてきてくれた きさき身長のわりに筋肉あると思ったらジムとか通ってんだな 何はともあれ ゲーセンか、行ったこと無いかも 『行ったこと無いなーゲーセン』 「は?マジかよ。そんなやつ朱里だけだとおもってたぜ」 と、自分で言って表情を曇らせた日向にイラっとした 『プリクラとろー、プリクラ』 「は?女じゃねえのに」 『いいじゃん、俺の初めてのゲーセン記念』 「俺はパスだ」 と、さっさとどこかに行こうとするきさきの腕を掴んで止めた 『やだ、きさきも一緒』 「2人で撮ればいいだろ」 『やだって、気まずいじゃん、まだ日向と知り合って2週間くらいしか経ってないのにこんな狭いところで2人きりって』 「おい、お前それ俺の目の前でいうか普通。傷付くぞ。てゆーかお前が撮りたいって言ったのに2人はやだって」 『記念記念。別に日向が嫌なんじゃ無いけど人見知りだから、僕』 「どこがだよ。まぁちゃっちゃととってゲームやろうぜ」 と、きさきも捕まえてブースの中に入っていく日向は やっぱりいいやつだった どんなポーズをしていいかわからないから カメラの指示通りにとって 適当にスタンプとか文字を入れて 出てきたプリクラを見ると 目が大きくて可愛くなっていた 『すごーい、きさきかわいい。日向はイマイチ』 「やめてくれ」 「なんだよそれ!さっきから」 『日向はそのままの方がかっこいいね』 「お、そ、そうか?つか、お前の方がきさきよりかわいいじゃねえか。さすが女顔だな」 『日向も失礼なやつだな』 3等分で出てきたプリクラを 日向ときさきに渡すと いらん、とキサキがいうから 無理やり携帯の裏側に貼ってやった ちっと舌打ちをしたきさきは知らんぷりだ プリクラを取れて満足して 今度は日向オススメのゲームをやりにいく 初めてだから上手く出来なくて 何回か交換でやって 今はきさきと日向が対戦をしていた なかなか勝負がつかなくて 暇を持て余したから ゲーセンの中をぐるぐるしていたら お菓子がどっさり採れそうなゲームを見つけて 挑戦をしていた 2回くらいやったところで タワーが崩れて キットカットがザクザクとれて満足だ、と 取れたキットカットをカバンに入れていく 「あんれー?先輩じゃないっすか。余裕っすねー。体育祭前だってのに」 という声に振り向くと うちの制服を着た生徒が5人くらい 『こんにちは』 「龍斗のやつ、こいつには手出すなって言ってただろ?やめようぜ」 「弱っちそうなやつ、なんでびびってんのわかんねえだろ?大体俺は龍斗の事も認めてねえ」 と、挨拶をしたのにこっちの事は無視してその中のトップと思われる2人が話し出した 僕のこと先輩って言ったし おそらくうちの1年生なんだろうな 「先輩、ちょっと付き合って下さいよ」 と、腕を引かれて連れ出されてしまった 抵抗しようかなって、思った けど、こんな店内でケンカとかしちゃったら 警察呼ばれちゃう そんな事になったらこの学校に来た意味がなくなっちゃうと大人しくついていった 路地に連れてかれて パキパキ、と指を鳴らしながら迫ってくる1年生達 「あんた潰したら、今年の体育祭は俺らが勝てるよな?」 いや、そんな 「かかれ!」 の合図で一斉に拳を振りかざしてくる1年生 むりだ、こわい 1人とか2人ならともかく 5人はむりだ どうにか避けたりするけど 拳は後側からも飛んでくる やられる、って思った けど 「待ちやがれ!」 「5対1とは卑怯だな」 と、ヒーローみたいな声が聞こえて ガードしている腕の間から覗くと 日向ときさきが来ていた 気付いてたんだ 僕がいないこと そして あっと言う間に1年生を蹴散らして 地面に座り込む 僕の腕を引いて立たせてくれる 「大丈夫か?どっか痛くねえ?」 『腕とわき腹と背中。腕は痣できた』 「立てるか?」 『平気』 と、ズボンについた泥を払う 『助けてくれてありがとう』 「ダチだろ。こんくらい当然だって」 「面倒ごとに巻き込まれてるなら助けるのは普通だ」 『僕、ふたりのこと本当にすき』 「なんだよいきなり」 「変なやつだな」 『当然みたいに助けてくれるところも、ダチって言ってくれるところも、心配してくれるところも。なんだかんだ言いながらも付き合ってくれるところも』 「照れるだろ、そんないきなり」 『スタバいこ』 「は?行くのかよ?手当は?」 『僕は新作のフラぺがのみたいの』 「女みたいなやつだな」 いこ、と路地から出るように 先頭をきってあるく 助けてもらったお礼に 今日は僕がスタバを奢ることにした 二人とも甘いのが好きかわからないから中くらいの小さいサイズにする 「よく女子高生の群れの中物怖じせずに行くよな」 と、どこか遠くを見ながらいうと日向 「朱里とも来たよな」 と、続いてボソッとつぶやくのを聞き逃さなかった 『ねえ、朱里くんって足速くてドッジボールとか強かったんでしょ?』 「…あぁ、あそこまで強いやつは見た事が無かったな」 「女だけどな」 と、二人は暗くなる 『ねえ、僕は女顔で細身でこの学校を制覇する為にきて、一年しめたとか噂になってるから勝手に朱里くんと比較されるんだけどさ』 「しょうがねえんじゃねえの」 『うん、今は仕方ないと思ってる。だけど』 ずずず、とフラペチーノを吸って ふたりの手にさっき取ったキットカットを乗せた 『僕は朱里くんじゃない』 「知っている、それくらい」 『でも、僕は弱いから』 「弱いくせにこの学校制覇なんてできないだろ」 『そうなんだよね、だから、2人の力を貸して欲しい』 「は?」 「くだらない」 『僕は朱里くんと違って弱いから、助けてほしい』 「知ってるぜ、お前が弱いことぐらい」 「改めて言われなくてもお前の事は守ってやる」 『ほら…、2人のそういうところすき』

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